血液検査で分かること・分からないこと

皆さん、こんにちは。
最近診察で血液検査を実施し、顕著な異常が認められなかったにもかかわらず、その後急変し亡くなられた患者さんがおられました。
検査結果からは重篤な状態を示唆する所見は乏しく、私自身も急変を予想していたわけではありませんでした。しかしこの出来事を通して、血液検査では分かることもあれば、分からないこともあるということを改めて感じました。
また、健康診断や血液検査がどのような目的で行われているのかについて、十分に理解されていないことも少なくありません。
そこで今回の記事では、診療中に実施される血液検査の数値の意味や役割について解説していこうと思います。
約20年の診療経験の中で私が感じていることや考え方も交えながらお話ししますので、少しでも参考になれば幸いです。
血球検査① 赤血球から分かること

まずは血球検査について解説します。
赤血球の異常としては、貧血と多血症があります。
診療現場でよく遭遇するのは貧血です。
貧血が認められた場合、私たちは単に「赤血球が少ない」と考えるだけではありません。身体が新しい赤血球を十分に作れているのかどうかを評価しながら、その原因を探していきます。
原因としては、出血、赤血球の破壊(溶血)、腎疾患、慢性炎症、骨髄の異常などさまざまです。
また、貧血はその程度だけでなく、どのくらいの速さで進行したのかも重要です。
慢性的に進行した貧血では比較的元気に見えることもありますが、急激な出血による貧血では数値以上にぐったりして見えることがあります。
場合によっては輸血や酸素管理などの緊急対応が必要になることもあります。
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一方、多血症では脱水が原因となることが多いものの、心臓病や呼吸器疾患による慢性的な低酸素状態が隠れていることもあります。
このように、血液検査で赤血球の異常が見つかった場合には、その数値だけで診断が決まるわけではありません。身体の状態や他の検査結果と組み合わせながら原因を探していくことになります。
血球検査② 白血球や血小板から分かること
白血球は、細菌やウイルスなどの病原体から身体を守る免疫細胞です。
白血球数が増加している場合には、感染症や炎症、腫瘍などに対する身体の反応が考えられます。また、病気以外のストレスによって増加することもあります。
診療現場でよく遭遇するのは感染症や炎症による増加です。近年はペットの高齢化に伴い、腫瘍に関連した変化がみられることも珍しくありません。
また、頻度はそこまで多くないものの、白血球系の腫瘍が原因で白血球数が増加する場合もあります。
一方、白血球数が減少している場合には、ウイルス感染や薬剤の副作用などが考えられます。白血球が極端に少なくなると感染症にかかりやすくなるため注意が必要です。
血小板は出血した際に血を固める役割を担っています。
そのため血小板数が少ない場合には、出血した際に血が止まりにくくなる可能性があります。ただし、採血時の条件や、特定の犬種によって実際より低く測定されることもあるため、数値だけで判断せず再検査が必要になる場合もあります。
生化学検査から分かること

生化学検査では、主に腎臓や肝臓などの臓器の状態を評価します。
腎臓に関する項目
腎臓に関連する数値が上昇している場合には、腎疾患が疑われます。
ただし、これらの数値は脱水の影響を受けることもあるため、血液検査の結果だけで判断できるとは限りません。身体の水分状態や尿検査の結果などもあわせて評価することが重要です。
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肝臓に関する項目
肝臓に関連する数値が上昇している場合には、肝細胞の障害や胆汁の流れの異常などが疑われます。
ただし、これらの数値が示しているのは主に「肝臓が傷ついているかどうか」であり、「肝臓がどの程度機能しているか」を直接評価しているわけではありません。
そのため、肝臓の機能をより詳しく調べる必要がある場合には、絶食状態で来院していただき、食前と食後に採血を行う肝機能検査を実施することがあります。
まとめ

血液検査では、赤血球や白血球、血小板の状態だけでなく、腎臓や肝臓などの臓器の状態についても多くの情報を得ることができます。
しかし、血液検査だけですべての病気を診断できるわけではありません。また、異常値が出たからといって必ずしも重い病気があるとは限らず、逆に正常値だから絶対に安心とも言い切れません。
そのため私たちは血液検査の結果だけを見るのではなく、診察時の様子や身体検査、画像検査などの結果もあわせて総合的に判断しています。
血液検査は万能な検査ではありませんが、動物たちの健康状態を知るための非常に重要な手がかりになります。
この記事が、動物病院で血液検査を勧められた際の参考になれば幸いです。
