うちのワンちゃん、年のせいか太ってきて、脱毛もあるわ。
何だかお水もよく飲むし、動物病院に行ってみましょうか?
その症状だと、ホルモン疾患の可能性がありますよ!
皆さんこんにちは!
皆さんの飼われているワンちゃん、中年齢から高齢にかけて、筋肉量は少なく、お腹が目立ち、皮膚が薄くなったり、毛が薄くなったり。
そんな症状が認められたら、副腎皮質機能亢進症かもしれませんよ!
中年齢から高齢のワンちゃんは、できる限り年に1~2回の定期健診を受けましょう!
副腎皮質機能亢進症とは?
中年齢から高齢(7歳以降)にかけて、腎臓の頭側にある副腎という臓器から放出されるステロイドホルモンが過剰に分泌されることがあり、これが副腎皮質機能亢進症です。
そもそも副腎が何をしているかというと、副腎皮質は身体のミネラルバランスを調節している鉱質コルチコイドと、ストレスに応答して身体をストレスから守る糖質コルチコイドというステロイドホルモンを分泌しています。
副腎髄質はアドレナリン・ノルアドレナリンといったようなカテコールアミンを分泌しています。
カテコールアミンは神経伝達物質として血管を収縮させたり、心拍数を上昇させたりする作用があり、ストレスに対する身体の生理的反応を調節しています。
副腎が何らかの原因で活発に働き過ぎることで、ステロイドホルモンが過剰に分泌されて、多飲・多尿、多食、脱毛、腹囲膨満、皮膚の菲薄化、皮膚の色素沈着、皮膚の石灰化、筋肉の虚弱などの症状が生じます。
原因は、脳の下垂体が原因の場合(80~85%)と、副腎そのものが原因の場合(15~20%)があります。
下垂体が原因の場合、下垂体の腫瘍性病変が原因となり、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に放出されることで副腎皮質の機能が高まります。
副腎そのものに原因がある場合は副腎が腫瘍化している場合や、過形成が起こっている場合があります。
また、アレルギー性疾患などに対して、長期間ステロイド投与をされている場合も副腎皮質機能亢進症のような症状を呈することがあります。
検査
怪しい臨床症状のあるワンちゃんに対しては、まず血液検査やレントゲン検査、腹部エコー検査などを実施します。
血液検査では、ステロイドホルモン過剰による影響として、
- ALP(アルカリホスファターゼ)の上昇
- 肝酵素の上昇
- 血糖値の上昇
- 血中コルチゾールの上昇
が主に認められます。
レントゲン検査では
- 副腎腫瘍の存在、およびその石灰化
- 腹囲膨満
- 骨密度の低下
などが認められることがあります。
腹部エコー検査では、副腎の大きさや形状が評価できます。
これらの基礎的な検査で副腎皮質機能亢進症が疑わしくなった場合はホルモン検査を実施します。
- ACTH刺激試験
- 合成ACTHを外部から投与し、投与前と投与後1時間の血中コルチゾール濃度を測定します。
- ACTHで刺激されると、副腎皮質からのコルチゾールの放出が大きく刺激されるはずです。
- 感度は60~85%程度、特異度は85~90%程度です。
- 低用量デキサメサゾン抑制試験
- 低用量のデキサメサゾンを投与し、投与前、4時間後、8時間後の血中コルチゾール濃度を測定します。
- デキサメサゾン(ステロイド)を外部から投与することによって負のフィードバックが生じ、血中コルチゾール濃度が抑制されるはずという理論です。抑制されなければ副腎皮質機能亢進症という判断になります。
- 感度は90~100%で、特異度は40~50%です。
これらの検査で副腎皮質機能亢進症の疑いが強くなり、臨床症状が存在している場合は治療が必要になります。
治療
治療は、原因によって異なります。
下垂体性の場合は、下垂体腫瘍の切除や放射線治療、もしくは内服によるコントロールで治療します。
下垂体腫瘍の切除や放射線治療はかなり専門的な治療になること、MRIによる評価が必要なことから一次診療の病院では難しく、二次診療施設や大学病院への紹介が必要になるでしょう。
投薬治療はデソパンやアドレスタンやトリロスタブ(トリロスタン)、オペプリム(ミトタン)、ケトコナゾールによりますが、トリロスタンによる治療が最も一般的でしょう。
最低投薬量による治療を開始した後は、定期的にACTH刺激試験での反応をモニタリングしながら、最適な治療量を設定します。
副腎皮質に原因がある場合は、副腎の腫瘤を切除することで完治が望めます。
副腎皮質機能亢進症自体が、術創の治癒を遅延させたり、血栓症の危険性を増加したりするため、手術前に投薬治療による全身状態の改善を試みます。
それから、副腎は大動脈などの大きな血管の近くにあるため、それらの大血管と腫瘤の関係性から手術に大きな危険の伴う場合は、二次診療施設や大学病院への紹介が必要かもしれません。
放置しておくことのリスクは?
副腎皮質機能亢進症はすぐに命の危機を招くということはないでしょう。
しかしながら、放置することで様々なリスクが生じます。
- 免疫力が低下し、感染症に罹りやすくなる
- 筋力が低下し、活動性に影響する
- 外傷が治りにくい
- 糖尿病のなどのリスクが上昇する
- 血栓症による突然死のリスクがある
これらの事態が生じる可能性があるので、放置せずになるべく早期に発見し、対処することが大切です!
- 中年齢から高齢のワンちゃんで、日頃目にする加齢性とも思える問題が内分泌疾患が原因である可能性がある
- 年に1~2回の定期健診が大切!
- 治療は臨床症状があるとき!
- 早期発見により対処することで、ホルモンバランス異常から生じる様々な問題を生じにくくすることができる!