猫の避妊手術について/手術までの流れと術後の様子を獣医師が解説

うちのネコちゃん、最近変な声で鳴いて困るわ。
うちもよ。枕元で大きな声で鳴かれると、眠れなくて大変。
発情をやめさせるには、避妊手術しかないのかしら。でもお腹を切るんでしょ?なんだか怖いわ。
決して怖いことではないんです。病気の予防という観点でもとても大切な手術ですので、この記事で解説していきますね。
避妊手術とは?
避妊手術とは、その名の通り妊娠を避ける手術のことです。
妊娠を避けるとなると、一般的には妊娠するために必要なもの、すなわち卵巣と子宮を取り除く手術になります。
動物病院によって手術手技に違いが出てきます。卵巣と子宮の両方を取り除く手術を選択する病院もあれば、卵巣のみを取り除く手術を実施する病院もあります。
この手術手技の違いは多くの場合その獣医師が手術を学んだ病院に影響を受けることが多いです。
卵巣のみを取り除く場合、子宮は残ることになるので、将来的に子宮疾患にかかる可能性が残るわけですが、卵巣を取り除くため、女性ホルモンの分泌が止まって子宮は退縮するため問題ないとも言われています。
私は卵巣と子宮の両方を摘出する手術を選択しています。
手術までの流れ
では避妊手術を受けるとして、準備はどうすれば良いでしょうか?
一般的には生後6ヶ月を過ぎていて、健康なネコちゃんに対して実施する手術です。
望ましくは現在発情中ではない状態で手術を受けるのがいいでしょう。なぜなら発情によって子宮の状態が大きく変わるためです。
- 子宮が充血する
- 子宮が太く硬くなる
これらの状況から、出血が増える、子宮が傷つきやすくなる、止血が難しくなるといった困難な状況が生じやすくなります。
また、望まない妊娠をしてしまった場合に、妊娠中に避妊手術を受ける場合もあるかと思います。この場合、大きくなった子宮を取り除くため、術創が大きくなります。また妊娠によって子宮は充血しているため、この場合も出血しやすい手術となります。
ただし、ネコちゃんが妊娠すると、2ヶ月ぐらいで3~5頭の子猫が生まれてくることになります。子猫のもらい手が確保できない場合は生まれる前に、なるだけ早い段階で避妊手術を受けてもらうことがネコちゃんの負担を減らすことにもなると思います。
また、病気の予防という観点では、最も影響が大きいのは乳腺腫瘍の予防です。発情を繰り返すことで乳腺が発達と退縮を繰り返し、将来的な乳腺腫瘍の危険性が上昇し、2歳を超えて避妊手術を受けた場合は予防効果はなくなると言われています。
ただし、その後の避妊手術でも子宮疾患は予防可能です。
以上の状況を考慮していただき、ご自身のネコちゃんが避妊手術を受けられそうだという場合は、かかりつけ医に連絡して予約を取りましょう。
緊急の状態(野良猫が捕まったなど)でない限りは、予定的に手術をするのがベストですので、かかりつけ医の受け入れがしっかりできた状態で手術をしましょう。
手術当日について
手術当日は、勿論全身麻酔をかけるので、絶飲食が基本になります。前日の夜ご飯を食べた後は食事を抜いていただき、朝にはお水も抜きましょう(病院によって異なる可能性があるので、かかりつけ医に相談しましょう)。
食事を抜いて病院に行ったら、手術の同意書を書きネコちゃんを預けます。
その後全身麻酔を安全に受けられるかどうかの検査(血液検査・レントゲン検査)を実施し、問題がなければ全身麻酔下で手術を受けます。
以下が術後の写真です。この子は軽い発情以外には特に何もなかった子です。

次の写真は妊娠初期の子の術後の写真です。若干傷口が大きくなっています。

このように、ネコちゃんの状態によって、手術の負担は大きく変わります。
私の場合は術後一晩は状態確認のためにお預かりし、翌日退院としています。
費用の目安としては、1~2万円が術前検査、2~3万円が手術費用、これに入院費、術後服などの費用が加わってくると思います。腹腔鏡で手術される場合は手術費が10万円前後になる場合もあるようです。
術後について
術後は傷口を舐めないように、エリザベスカラーを着けるか、術後服であるエリザベスウェアを着てもらいます。
エリザベスカラーは視界が悪くなったりするので、最近はエリザベスウェアを着せる方が多くなっている印象があります。
病院によって、退院時に抗生物質を処方される場合とされない場合があると思いますが、かかりつけ医の先生の指示に従って過ごしてください。
避妊手術とはいっても他の手術と大きく変わりません。ですから、抜糸までは元気食欲・創部・排泄などについて注意深く見ていただき、何か異常があれば様子を見ずにかかりつけ医に必ず連絡することをお勧めします。
術後考えられる合併症は以下の通りです。
- 創部の離解・感染など
- (特に腹腔内の)出血
- 全身麻酔の影響による全身状態の悪化(循環不全や脱水など)
これらはもし放置すれば避妊手術と言えども命に関わることがあります。必ず放置せずに適切に対応してください。
最後に

ネコちゃんと長く健康に共に暮らすことを目的とした場合に、避妊手術は避けて通れない道だと思います。
猫の避妊手術をきっかけに、生活環境を見直す飼い主さんも少なくありません。
外に出る猫では、交通事故やケンカによるケガ、感染症などのリスクがあります。
避妊手術後の健康管理という意味でも、屋内での生活を基本とすることが猫の安全につながります。
外飼いの猫を屋内飼育へ移行する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。https://shoroublog.com/keep-cat-outdoors/
身体にメスを入れさせたくない、交配させたいなど、飼い主さんによって様々な意見をお持ちだと思います。
ただ、過度に恐れず、過度に軽視せず、この記事を読んでうちの子の避妊手術どうしようかなと思ったなら、まずかかりつけ医の先生にご相談することをお勧めします。
皆さんとネコちゃんの生活がハッピーであり続けることを願っています。



