今回はスティーブン・スピルバーグ監督の第二次世界大戦長編、『プライベート・ライアン』(原題:Saving Private Ryan)をご紹介します。
舞台は1944年、第二次世界大戦終盤、フランスのノルマンディー地方における上陸作戦でのドラマを描いた映画です。
かなり生々しい表現が随所に出てきますので、そういったものが問題ない方であれば是非ご覧になっていただきたい超大作です。
あらすじはネタバレも含まれますので、内容を知りたくないという方は、感想だけ読んでいただいてもと思います。
この映画が向いている思う人
- 戦争映画が好きな人
- 残酷な表現にも抵抗感のない人
- トム・ハンクスが好きな人
序盤
物語はある老人が、感極まった様子で、戦没者の墓地に向かうところから始まります。
老人はある墓の前で崩れ落ち、家族に支えられながら、回想シーンへ移ります。
1944年6月6日、オマハ・ビーチでドイツ軍の激しい抵抗に遭いながら、連合国軍が上陸を試みます。多数の犠牲者を出しながらも、何とか海岸を制圧した連合国軍。
その犠牲者の中に”S.ライアン”がいました。このショーン.ライアンはライアン家4兄弟のうちのひとりであり、同じくノルマンディー上陸作戦に加わっていた、ピーター・ライアン、ニューギニアで参戦していたダニエル・ライアンも亡くなったことが分かります。
4兄弟のうち3人亡くなったことが分かり、軍上層部は、過去に5人兄弟を全員亡くした家族があり、同じ悲劇を繰り返さないために、生き残っている可能性があり、同じくノルマンディー上陸作戦に参戦しているジェームズ・ライアン(マット・デイモン)を戦場から連れ戻し、母親の元へ返すことを決断します。
中盤
上層部からの命令を受けたミラー大尉(トム・ハンクス)、ホーヴァス一等軍曹(トム・サイズモア)、ライベン一等兵(エドワード・バーンズ)、ジャクソン二等兵(バリー・ペッパー)、メリッシュ二等兵(アダム・ゴールドバーグ)、カパーゾ二等兵(ヴィン・ディーゼル)、ウェイド四等技能兵(ジョヴァンニ・リビシ)、アパム五等技能兵(ジェレミー・デイビス)が、ライアンの救出へ動き出します。
危険な戦地で、8人で1人を助け出すという、納得のいかない任務ではあったものの、上層部からの命令であるので任務を遂行する8人。
ドイツ軍と交戦中の村に遭遇した8人は、フランス人一家から、娘を保護してほしいという依頼を受けます。ミラー大尉は安全が確保できないことを理由に断りますが、人情味のあるカパーゾ二等兵が娘を引き受けます。
そんな中、敵に隙を突かれて狙撃されたカパーゾ二等兵は、胸を打たれて亡くなってしまいます。
ドイツ軍との戦闘後、村でやっと”ジェームズ・ライアン”を探し当てましたが、同姓同名の別人でした。
空挺部隊の集結地で、連れ戻すべき”ジェームズ・ライアン”が、前線の橋を守っていることを突き止め、ミラーの部隊は前線を目指します。
前線へ向かう途中、ミラーの部隊はドイツ軍のレーダーとそのレーダーを守っているドイツ軍を見つけます。
部下たちは迂回して前線を目指そうとミラーに進言しますが、ミラーは自分たちの後に通る連合軍に犠牲が出てしまうと、ドイツ軍を攻撃することを選択します。
ドイツ軍との戦闘のさなか、ウェイド技能兵がドイツ軍の銃撃で死亡します。戦闘終了後、ウェイドが殺されたことで生き残ったドイツ軍兵士を殺害しようとライベン、ジャクソン、メリッシュが意見しますが、アパムは捕虜は殺してはならないと反対し、ミラーも逃がすことにします。
かねてからミラーの指示に反発していたライベンは隊を抜けようとし、それを留めようとするホーヴァスと衝突します。
ミラーは自身が学校の教師であったことを告白し、胸を張って家族の元に帰れるようにただ任務を遂行している、人を殺すとそのたびに家族の元へ帰りづらくなる気がすると、ライベンに伝えます。
ミラーが腹を割って心中を話したことによってライベンは隊へ戻ります。
終盤
ミラーの部隊は前線の橋にたどり着き、ジェームズ・ライアンをとうとう見つけます。
兄弟が全て亡くなり、帰還命令が出ていると聞いても、ライアンは”戦場の兄弟を放って帰れない”と言い、残って戦うことを希望します。
戦って生き残りライアンを無事に連れて帰れば命令違反したことにはならないと、ミラーの部隊も残ってともに戦うことを決意します。
前線の橋を守っている部隊とミラーの部隊を足しても、人数が乏しく、武器も心許ない状況で、ドイツ軍の戦車を迎え撃つことになります。
最初は善戦していたものの、ドイツ軍に徐々に押され、ミラーの部隊もジャクソンは戦車に砲撃され、メリッシュは逃がしたドイツ兵に殺されることになります。
ホーヴァスも撃たれて亡くなり、ミラーも瀕死の重傷を負います。その時、連合軍の航空機による爆撃と援軍が到着し、ドイツ軍は敗走します。
瀕死の重傷を負ったミラーはライアンに”無駄にするな、しっかり生きろ”と言い残し、息を引き取ります。
時は現代に戻り、序盤に墓を訪れていた老人がミラー大尉の墓標の前に立っています。
この老人こそ、ミラーの部隊に命を救われたジェームズ・ライアンその人だったのです。
ライアンは妻に言います。”私は良い人生を送ったか?良い人間だったか?”と。
妻は言います。”もちろんよ”と。
感想
序盤のオマハ・ビーチでの戦いから、銃撃や出血の生々しさ、兵士の命が奪われていく様が非常にフレッシュに描かれており、中盤の村での戦いの際には雨が降っているさなかでの戦いがリアルで、終盤の前線の橋での戦いも火薬の匂いまで伝わってくるようで、まるで観客は現場にいるかのように引き込まれます。
また、戦争時独特の人間模様、心理的な駆け引きもしっかり描かれており、非常に見応えがあります。
戦争の悲惨さ、平和の尊さを感じずにはいられず、改めて、はやくこの世から戦争がなくなってくれることを願ってやみません。