先生、うちの子食欲なくって、点滴しましょうって言われたわ。
うちの子は腎不全だから点滴しましょうって言われたわ。
では、そもそもなぜ点滴治療をするのか、点滴治療とはどんなものなのか、勉強していきましょう!
点滴治療は、日々の診療の中で非常に重要な役割を果たしています。
点滴治療について
そもそもなぜ点滴治療をするのでしょうか?
身体にはそもそも、その状態を正常に保とうとする機構である”ホメオスタシス(恒常性)”が存在します。
水分という観点で言えば、
- 脱水気味だったら腎臓で尿を濃縮して、尿から排出される水分を減らしたり、飲水量を増やすことで水分摂取を増やす
- 身体に水が多いなら、尿の量を増やして余分な水分を体外へ排出する
といった機構が存在します。
しかしながら、
- 食欲がなくて水分が十分に摂取できない
- 下痢や嘔吐があって身体から水分が過剰に出る
- 腎臓が悪くて水分調節が難しい
などの状況があれば、外部から水分を補っていったほうが身体の回復が早かったり、そもそも腎不全などの病態によって脱水傾向になりやすく、外部から水分を補う必要のある状況も存在します。
点滴量について
点滴量は以下によって決まります。
- 維持量
- 維持水分量は、栄養素を1kcal代謝するために必要な水分量が1mlですので、1日に必要な維持カロリーが、体重が2~45kgの場合は体重×30+70、体重が2kg未満の場合は70×体重0.75であり、これに係数(痩せている、太っている、成長期などの状況による係数です。)をかけたものです。したがって維持水分量はこのkcalをmlにすれば算出されます。
- 喪失量
- 嘔吐や排便・排尿や呼吸などで失われる量です。排泄された尿量や、吐物を測ったりして求めます。
- 不足量
- 脱水の%です。体重×脱水%で算出されます。
維持量+喪失量+不足量を出せば1日に必要な水分量が算出されます。
概算的には体重1kgあたり40~60ml/日と覚えておけば大きく外れることはないでしょう。
注意したいのは、心臓が悪くて過剰な水分が身体にとって良くない状況や、過剰に点滴をして身体がむくんでしまっている状況などです。
計算して点滴を実施していたとしても、身体を触ったり、体重を測定したりして過剰な点滴ではないかということは常に意識しましょう!
点滴の経路
点滴する方法としては、静脈内投与、骨髄投与、皮下投与があります。それぞれの特色は以下の通りです。
静脈内投与
- 重度の脱水があり、急速に輸液を実施したい場合や、血液の浸透圧が低く、皮下点滴では点滴が吸収されにくい場合などに選択します。
骨髄投与
- 静脈内投与と同様の状況であっても、子犬や子猫などの小さな動物で血管の確保が難しい場合は骨髄に針を刺して、そこから輸液を投与します。
皮下投与
- 全身状態がそこまで悪くなく、通院で水分を補いたい場合や、自宅で点滴を実施したい場合はこの方法で点滴を実施します。
どの方法がよいのか、病態やコスト、生活リズムなどによって柔軟に対応する必要があります。かかりつけの獣医師さんとよくご相談し、決めていただければと思います。
点滴治療は回復を早めたり、状態維持に必要だったりする
点滴量は計算して投与するが、その都度状態はしっかりチェックする
どの経路で点滴するのか、獣医師さんとしっかり相談する